2018年3月に開催される「20ヵ国・地域(G20)による財務相・中央銀行総裁会議」で、仮想通貨の規制案が議題になるとの報道がありました。
その会議では、世界に先駆けて「仮想通貨交換業者の登録制」を導入した日本がG20の議論を主導するとのことです。
そこで、ここではG20がどのような議論を行い、市場にどうのような影響を与えるか見ていきたいと思います。規制が強くなるとの報道に、仮想通貨はどのような反応を見せているのでしょうか。
そもそもG20って何?
G20とは、主要国首脳会議(G7)に参加する先進7か国に、EU、ロシア、新興経済国11か国からなるグループの総称です。2008年に、世界金融危機を議論するために開催された金融サミット「第1回20か国・地域首脳会合」がG20の始まりとなります。
- G20参加国
- ブラジル、ロシア、アメリカ、EU、中国、イタリア、アルゼンチン、韓国、インドネシア、サウジアラビア、メキシコ、南アフリカ、フランス、トルコ、インド、イギリス、オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本(※太字がG7です。)
開催地と日程
2018年の「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」は、3月19日(月)20(火)の日程で、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催されます。2018年4月20日には、アメリカのワシントンD.C.で再度、G20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催される予定です。
ブエノスアイレスでの会議内容は?
今回のG20の会議で、一番の焦点とされる内容は「仮想通貨の規制案」です。近年の仮想通貨は投機としての特徴が色濃く出ており、市場がマネーゲームとなっているなど強い懸念が示されています。
具体的な議論としては、価格の変動を扇動する情報の取り締まりや、借りた仮想通貨を売りにかける「空売り」の禁止などが議論されるといわれています。
他にも、仮想通貨には匿名性を持った通貨もあり、犯罪のための資金調達や、マネーロンダリング(資金洗浄)といった違法行為をどう防いでいくかが争点となるはずです。
- マネーロンダリング
- マネーロンダリングとは、日本語で資金洗浄といわれるものです。麻薬、脱税、粉飾決算といった犯罪で得られた資金を、様々な口座に転々とさせることで、資金の出所をわからなくする行為をいいます。
また、先日にはフランスとドイツの経済省や中央銀行の高官らが、仮想通貨の取り締まりを要請する書簡をG20に送っています。このように、今回のG20の会議は、世界的に仮想通貨を規制しようという考えが強いものになりそうです。
規制で話が進むのか?
世界各国における規制への勢いは確かに強いものです。しかし、議論を主導する日本は、仮想通貨法などの取り組みをしっかり説明していくとの姿勢をみせています。
2月22日に開かれたシンポジウムでは、財務省の浅川雅嗣財務官が「仮想資産は大きな可能性を秘めており、リスクだけでなくチャンスでもある。」との発言をしています。(財務省の長である麻生太郎財務大臣は、以前「何でもかんでも規制すればいいとは思わない」と発言していますね。)
また、ブロックチェーンの技術や仕組みは利用価値があるとして、様々な公共サービスに取り入れている国も多くあります。(詳しくはこちら【2018年版】世界各国における仮想通貨の規制状況まとめ)
仮想通貨は、比較的新しい技術や分野で、今はそれを理解し定義していこうという段階です。そのため、まだ理解できていないことを一斉に取り締まるということはないはずです。
このように、今回のG20では世界で一斉に規制しようという話ではなく、仮想通貨の「可能性」と「危険性」の両方を話し合う会議になるでしょう。
市場への影響と予想
それでは、肝心な市場の動向を見ていきましょう。まず、今回の会議で議論が予想されるポイントは以下の2つです。
- 利用者保護
- マネーロンダリング
今回の会議は日本が主導して議論が行われていくということで、始めに日本の仮想通貨法が紹介されるのではないでしょうか。この仮想通貨法は、取引所の登録制を導入することで、取引所に「資産の分別管理」や「情報開示」による利用者保護を目的としたルールです。
これにより、セキュリティや管理がずさんな取引所は淘汰され、信頼のある通貨だけが取り扱われるようになります。利用者にとっては、本人確認といったプロセスがわずらわしく思えますが、利用者保護は長期的に見ると大変な好材料です。
また利用者保護の観点から、取引に制限がかけられることも予想されます。
中には、取引の上限を国際的に決めたり、空売りといった信用取引を禁止するという報道もあり、これが決定されると大口取引が減り、価格の大幅下落の可能性があります。
長期的な信頼をいまだ確立できていないアルトコインなどは、影響がでやすいかもしれません。
マネーロンダリングへの対策はまず間違いなく検討されるでしょう。マネーロンダリング対策は、利用者の徹底的な身元確認や、利用者情報の定期的な記録更新といった取り組みがあり、これによって取引所の利用が現在より難しくなる可能性があります。
過去の規制を例にすると、規制という言葉によって憶測が広がり、市場は売りに走る傾向があります。今回のG20もその可能性は高いです。
しかし「規制」は「禁止」と異なり、良いものや良い環境を整備していくために、行われていくものです。G20の会議で少なからず価格に大きな影響が見られるのは間違いありませんが、技術やプロジェクトに高い信頼がある通貨は、長期的に必ず価格を上昇させていくでしょう。
G20の会合は、そのような通貨に、価格が落ちたところで投資ができるいい機会かもしれません。