去年(2017年)、仮想通貨は「仮想通貨元年」と呼ばれるほど大きな盛り上がりを見せ、「億り人」と言われる億単位の利益を出した方も多数現れましたね。億とは言わずともかなり利益を出した方が多いのではないでしょうか?
ですが仮想通貨で稼いだ利益にはしっかり税金が課せられます。去年1月から12月ぶんの利益に対しての税金を計算する為に確定申告を行わなければなりません。
確定申告をしっかりと行わなければ延滞税、過少申告加算税、不納付加算税、重加算税など多額の税金を後でバッチリと取られます。
そうなっては折角の利益もパーになりますね。それだけは避けたいので、今回は仮想通貨の確定申告の方法と節税方法、そして税金の計算を手助けするツールを解説していきます。
今回確定申告が必要な人
今年の所得税の確定申告期間は2018年2月16日(金)~3月15日(木)です。
今回、確定申告をしなければならない方は2017年1月1日から2017年12月31日までに
- 仮想通貨を売却した人
- 仮想通貨で商品を購入した人
- 仮想通貨同士の交換(売買)をした人
- ハードフォーク(分裂)した仮想通貨を売却した人
- 仮想通貨をマイニングした人 etc
上記に当てはまる方で、20万円以上の所得(利益)がある方が対象です。被扶養者の主婦や学生は38万円以上です。
ちなみに現金で仮想通貨を購入したまま保持してる方は上記に当てはまらないので課税対象にはなりません。
仮想通貨で得た利益は「雑所得」か「事業所得」
所得税の区分は10種類に分けられているのですが、仮想通貨で得た利益は「雑所得」か「事業所得」に分かれます。
何が違うのかと言うと、他の会社で働きつつ副業として仮想通貨取引をしている方は「雑所得」にあたります。一方、仮想通貨取引で生計を立てている人は「事業所得」にあたります。
おそらく事業として仮想通貨取引をしている方はかなり少数だと思われるので、今回は「雑所得」にあたる場合で解説をしていきます。
雑所得とは?
所得税の区分は10種類に分けられていると先述しましたが、雑所得は他の9種類の所得(給与所得や事業所得など)のいずれにも当てはまらない所得の事を言います。
例えば、
- アフィリエイト収入や転売で得た利益
- 年金や恩給などの公的年金等
- 仮想通貨を売却、使用した事による利益
- 生命保険契約等の定期年金
この他にも色々ありますが、これらを雑所得と言います。
雑所得の税率
雑所得は総合課税に分類されますので、他の所得(給与所得など)と合算して税率が決まります。
以下は所得税の速算表です。ご覧ください。
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 | 住民税 | 195万円以下 | 5% | 0円 | 10% | 195万円 ~ 330万円以下 | 10% | 97,500円 | 10% | 330万円 ~ 695万円以下 | 20% | 427,500円 | 10% | 695万円 ~ 900万円以下 | 23% | 636,000円 | 10% | 900万円 ~ 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | 10% | 1,800万円 ~ 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | 10% | 4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 | 10% |
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単純に仮想通貨だけの利益を計算すると、例えば400万の利益が出たとしたら 400万×20%-427,500円=372,500円…① 400万×10%=400,000…② ①の所得税と②の住民税を合計した772,500円の税金がかかります。
上記は仮想通貨だけで計算しましたが、会社員の方などは給与所得をプラスして計算しなければなりません。それについても説明します。
会社員の確定申告は?主婦や学生は?
仮想通貨取引をしている方には会社員の他にも、主婦や学生であったり、被扶養者だとか103万円の壁だとかその状況により納税額は異なります。
それらをパターン分けして説明していきます。
会社員(給与所得がある)の場合
年末調整済みの給与所得を有する方で、1月~12月までに仮想通貨取引や他の雑所得の利益の合計が20万円を超える方は確定申告をしなければなりません。
給与所得+雑所得の合計に対して所得税がかかりますので注意が必要です。この場合先述した所得税の控除額の他にも、給与所得に対する控除額(給与所得控除)があり、これは人によって違うので国税庁のホームページを確認してください。
雑所得の合計が20万円以下の方は確定申告をする必要はありません。
被扶養者の主婦・学生の場合
被扶養者は103万円の控除があり、103万円の壁などとよく言われますがその内訳は「基礎控除38万円+給与所得控除65万円」の合計で103万円なのです。
雑所得の場合は基礎控除に含まれるので、利益が38万円を超えなければ確定申告をする必要はありません。
しかしパートやアルバイトなどで給与を貰っている方は、基礎控除を受けられるものに該当する所得は38万円以内に収まっていなければならないので、例えば仮想通貨で33万の利益を出したとしたら給与所得は70万以内に抑えなければなりません。
仮想通貨の所得金額の計算方法
日々価格が変わる仮想通貨でどうやって所得額を計算すればいいのか、ここが皆さん躓くポイントかと思いますので詳しく解説していきます。
仮想通貨を売却あるいは商品を購入した際の所得計算
ビットコイン(BTC)で計算の例を挙げていきます。
仮想通貨の所得額を計算するには、まず所得時の1個単位の価格が必要です。
1,000,000円で2BTCを購入したとします。この時の1BTCあたりの金額を計算します。
1,000,000円÷2BTC=500,000円。これが1BTCあたりの金額になりますね。
月日が経ち、そのBTCの値段が上がって来たので0.5BTCを400,000円で売却(あるいは商品を買う)するとします。
計算式は、『売却するビットコインの金額(時価)-最初に計算した1単位あたりの金額×売却したBTCの数=所得金額』になります。
上記の例だと、400,000円-500,000円×0.5BTC=150,000円。この150,000円が所得金額になります。
なお、ほとんどのトレーダーは途中で買い増しなどを行っていると思われるので購入時の1BTCの金額が500,000円とは言えない場合が出てきます。
その際に取得金額を求める場合、移動平均法か総平均法を使用しますが、仮想通貨の細かいトレードに移動平均法を使うとかなりの量を計算しないといけないので、簡単にできる総平均法がオススメです。
総平均法で所得時の1個単位の価格を出す場合は『1年間に取得したBTC(仮想通貨)の総額÷1年間に取得したBTC(仮想通貨)数』です。
所得金額を出す場合は『1年間に使用した総額-使用したBTC(仮想通貨)×取得時の1個単位の価格』です。
仮想通貨同士の売買をした際の所得計算
皆さん気になるのがこの部分かと思います。ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を例に説明します。
まず3,000,000円で6BTCを購入したとします。先程のように1個単位の価格を出します。
3,000,000円÷6BTC=500,000円になりますね。
そして数週間後、0.8BTCを使って、3ETH(時価合計200,000円)を購入します。
この際の計算式は『ETHの時価合計(購入価格)-1BTCあたりの取得価格×支払うBTC=所得金額』です。
なので200,000円-500,000円×0.8BTC=-200,000円となり、マイナス200,000円が所得金額となります。
雑所得の中でなら損益通算できるので、先程の150,000円とマイナス200,000円を合わせる事が出来ます。損益通算をして20万以下なら確定申告する必要はありません。
所得金額の計算を手助けするツール
色んな取引所で色んな通貨を取引している方はかなりの計算が必要になり、とても面倒ですよね。しかし無料で所得金額を計算してくれるツールCryptactを利用する事で一瞬でその作業は終わります。
取引所でダウンロードできるcsvファイル(取引履歴)をアップロードするだけです。
現在、国内海外合わせて15の取引所に対応しており、今後も順次追加予定です。
確定申告の方法を紹介
確定申告をする際は以下の書類が必要です。
- 会社から貰う源泉徴収票
- 仮想通貨取引に係る雑所得の計算明細書
- マイナンバー確認書類
- 免許証や保険証などの本人確認書類
仮想通貨取引に係る雑所得の計算明細書については、管轄の税務署に何が必要か連絡するのが一番手っ取り早いです。
それでは確定申告書の作成方法を説明していきます。
まず確定申告書等作成コーナーにアクセスして、「作成開始」をクリックしてください。
マイナンバーカードとICカードリーダーライターを持っている人はネット上で完結できるのですが利用条件が厳しい為書面での説明をしていきます。
雑所得を申告するので、1番上の「所得税コーナーへ」をクリックしてください。
真ん中の赤い「全ての所得対応」をクリックしてください。
次の画面では①タブと②タブがありますが、医療費控除などを申請する訳で無いなら②タブが便利です。
「給与」をクリックして給与を入力していきます。
給与は源泉徴収票を見ながら画面の指示に従って入力してください。
次に、「雑」から「その他」をクリックして雑所得を入力していきます。
今回はこのように取引所名を書いています。
入力が完了すると自動で納税額が表示されます。その後、住所、氏名、マイナンバーなどを入力し、印刷画面に移るのでプリンターがある方は印刷、pdfで保存してコンビニで印刷も可能です。
そして税務署に直接行って提出するか、郵送で税務署に送りましょう。
税金の支払い方法は?
現在税金の支払い方法は、
- 指定の口座へ振替納税
- 税務署で現金払い
- クレジットカード払い
- 電子納税
以上4通りありますのでお好きな方法でお支払いください。クレジットカードか振替納税が一般的かなと思われます。
現在出来る節税方法を紹介
最大で55%も課税されるのはやはり痛いです。なので節税して税金を抑えたい、そんな方の為に現在考えられる節税の方法を紹介します。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税を利用して地方に寄付する事で、様々な返礼品が貰えます。さらに寄付した金額は税金の控除として扱う事が出来る為、節税しつつ返礼品が貰えるためかなりお得かと思います。
ふるさと納税の公式ホームページで控除額シミュレーションが出来るので、是非シミュレーションしてみてください。
含み損が出ている仮想通貨を売却し、損益通算して利益を抑える
雑所得は損益通算が出来るので、含み損が出ている仮想通貨を日本円に換える事で利益額を減らす事が出来ます。
これを利用して雑所得の累進課税のパーセンテージを調節する方法がオススメですね。331万の利益だと20%の所得税がとられますが329万だと10%しか取られません。
毎年20万円以下に抑えて利確する
こちらの方法は余り現実的ではないですが、20万円以下に抑えて利益を確定させる事で、確定申告の必要が無くなります。
最後に
長くなりましたが仮想通貨で得た利益での確定申告方法の説明は以上になります。こちらに記載している内容はあくまで参考程度として頭に入れておいてください。
管轄の税務署により細かい部分が違ったりする可能性があるので、最終的にはご自身で確認する事をオススメします。